久保田賢次
KenjiKubota

山岳科学研究者

  essay  

1958年、茨城県筑波山麓(新治郡八郷町)に生まれる。県立石岡第一高校卒業後、早稲田大学商学部へ。 
学生時代に歩行(あるこう)会というサークルで登山を開始、同時に東京都山岳連盟加盟の徒登行(ととこう)山岳会にも所属し、沢登りなどを中心に幅広く登山に親しむ。当時、夜間に東京新聞に勤務していたことから、「岳人」編集部で登山雑誌の仕事を手伝わせてもらう機会を得、その流れで1981年に山と溪谷社へ就職。
広告部、「skier」編集部、「SNOWBOARD」編集部、「山と溪谷」編集部(90年代前半~2000年)ほかに勤務。その間「山と溪谷」編集長、電子雑誌「週刊ヤマケイ」編集長、ヤマケイ登山総合研究所所長、登山教室運営室室長、日本山岳遺産基金事務局長などを経て、2018年12月退職。
現在、筑波大学生命環境科学研究科山岳科学学位プログラムに在籍。「山岳地域における事故および遭難に関するデータの時空間的解析」をテーマに研究中。日本山岳救助機構研究員を務めるほか、東京都山岳連盟救助隊などにも所属。


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「山の日」2020 応援メッセージ

写真は茨城の生家から見た筑波山。正月に帰省した際に撮りました。
夕陽が沈もうとしている方角が、私が暮らす東京方面でしょうか。 
まさか、今のような日が来ようとは 想像だにしませんでした。
「今度は8月のお盆の時にね」。高齢の母親に、そう告げて戻りました。
「山の日はお盆時期だし、故郷がある人は、幼少の頃に親しんだ風景を眺めて、
家族のことなどを想うのも、いい過ごし方ですよね」。 
人に問われる度、そう語ってきた私も、この夏の帰省は諦めました。
どこか高いビルの屋上から、筑波山の姿を探します。
母親も、夕陽を見ながら息子のことを想ってくれるでしょうか。

2020/07/30
https://www.yamanohi.net/newslist.php?page=19

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山の日アンバサダーエッセイ

久保田賢次

「山」を学んで見えて来た「川」と「海」
身に余る紹介をいただいていますが、研究者というより大学院での勉強途上の学生です。皆さまには山と溪谷社でもお世話になりました。もっと「山」のことを知りたくて、定年退職を機に筑波大学の山岳科学学位プログラムに入れてもらいました。研究テーマは「どうすれば山岳遭難を減らせるか」ですが、山や森林はもちろん、川や海にも関連した研究をなさっている先生方や同僚との触れ合いのなかで視野も広がってきました。

思い出すのは、作曲家の船村徹さんが2008年9月7日の「下野新聞」に寄稿し、山の日制定運動のきっかけともなった文章の一節。「自然界の大摂理として、太古から信仰的にも実生活的にも人類にとっては山海一体なのであった。山に降った雨や雪は、森にしみ出して林を流れ下り村や里をうるおして大河となって、やがて広大な海洋へとたどり着くのだ」。ここ数ヶ月は遠出を控え、自宅近くの荒川土手をゴミ拾いなどをしながら、散策することも多かったのですが、富士山を始め丹沢、奥多摩、秩父、奥武蔵などの山々を眺めつつ、あの遠い峰々に降った雨が徐々に大きな流れとなって、目の前にあることに、今さらながら感動しました。

また、昨秋の台風19号による洪水の際は、改めて自然の猛威を知ると同時に、水が引いた後に残された大量のペットボトルなどを見て、深刻な海洋プラスチック汚染のことに思いが及びました。「One Earth」という言葉もあります。環境問題などを考える上では、「山の日」の催しと「海の日」の関連行事などが連動した「山海一体」の活動などもあれば、国民の祝日としての意義も、さらに増していくのではないか…。そんなことを想う昨今です。

久保田賢次(山岳科学研究者)

写真キャプション
夕暮れ時、東京足立区の住まい近くを流れる荒川の土手からも、源流の山々が美しく見渡せる。山と海とのつながりを実感できる時だ

筑波大学山岳科学センター https://msc.tsukuba.ac.jp/
山の日アンバサダー https://www.yamanohi.net/ambassadordetail.php?id=27