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山の日レポート

山の日レポート

加賀市「山の日」フォーラム 【主催者挨拶】【報告1】

2021.06.01

全国山の日協議会

【主催者挨拶】鹿野 勝彦

「山の文化を未来につなぐ山の日記念フォーラムin加賀」

全国山の日協議会は、昨年(令和2年) 11月7日に、加賀市、NPO法人深田久弥と山の文化を愛する会との共催で、「山の文化を未来につなぐ 山の日記念フォーラムin加賀」を加賀市内で開催することとしていました。
フォーラムでは加賀市をはじめとする加賀地域において、山の文化を守り継承する活動を続けてこられた方々の報告とそれに基づくパネルディスカッションを行い、その内容を地域に根差した活動の一つのモデルとして全国に発信することを目的として、鋭意準備を進めてきたところです。しかしコロナウイルス感染の拡大が続く状況の下で、残念ながらフォーラムの開催は見送らざるを得なくなりました。そこで以下ではこのフォーラムが企画された背景と狙いを記すとともに、予定されていた報告の内容をまとめ、全国山の日協議会の HPに公開するものです。 


「山の文化を未来につなぐ 山の日記念フォーラムin加賀」企画の背景と狙い
  全国山の日協議会 評議員 鹿野 勝彦
  (金沢大学名誉教授 文化人類学)

国民の祝日としての「山の日」は平成28年に制定され、今年で5年目を迎えます。
「山の日」は日本の国土の70 %近くを占める森林を主とする山地の環境を保全するとともに、その恵みを生かして国民の健康を守り、地域の振興を図ることを制定の趣旨としていますが、そのためにはこれまで山地を生活の場として守り維持してきた人々の文化を次世代に継承することが不可欠です。
しかし現在の日本では、人口の少子高齢化と大都市圏への集中が進行しており、それにともなって山地の維持管理が十分に行われないことに起因する災害の発生をはじめとするさまざまな問題が起こり、さらにはこれまで脈々と伝えられてきた、山をめぐる文化が失われかねない事態も生じています。その一方で、こうした状況に危機感を抱き、山地、山林の維持、保全や再生に取り組むとともに、山にまつわる文化の継承をこころざすさまざまな活動が、全国で繰り広げられるようになってきています。
全国山の日協議会はそのような山の文化の継承を目指す地道な活動が行われてきた地域の事例として、石川県の加賀市をはじめとする加賀地域に注目し、4人の方々にその活動の内容を具体的に報告いただくとともに、そこで生じている課題についても、バネルデイスカッションを通じて明らかにすることを目的として、フォーラムを企画しました。
フォーラムの規模は、直接の参加者を地域住民中心とするため、さほど大きくはならないにせよ、地域に根付いた山の文化を次世代に継承する試みのモデルケースとして、その内容を協議会のチャンネルを通じて全国に発信し、広く共有することを目指していました。その背景には、これまでの協議会の活動の多くが、ともすれば大都市住民の視点からなされがちであり、その結果として山という場も、都市に住む人々がレクリエーションのために出かけてゆく対象としてとらえる傾向から抜けきれていなかったのではないかという反省があります。
残念ながらフォーラムの開催は中止せざるをえませんでしたが、報告を予定していた方々の活動は個々にはささやかなものであっても、山を生活の場とする地域の特徴を生かしたユニークなもので、協議会としてはその内容を広く全国に発信し、我が国の山にまつわる文化とその継承に関心を持つ方々に伝えてゆくことには大きな意義があると考えます。
さいわいに現在ではさまざまなICTを活用した情報発信のかたちが存在しますし、それを活用することを通じて、これまでつながりのなかった、山の文化の継承に関心を持つ、地域や年代を超えた人々のネットワークの形成、連携を促進する可能性も開けています。
我が国の山の文化とその継承に関心を持つおおくの方々に このフォーラムの内容を共有していただけることを念じています。

【報告1】鞍掛山と共に歩む里山の魅力作り~未来へつなぐ地域づくりの活動~

報告者:
滝ヶ原町鞍掛山を愛する会 会長 山下 豊

鞍掛山と共に歩む里山の魅力作り~未来へつなぐ地域づくりの活動~

「鞍掛山」は石川県の小松市と加賀市の境界にあり、標高約478mで麓から見ると馬に掛ける鞍のような形をしています。また江戸時代から明治にかけて日本海を航行した北前船や漁船などの航海の目印になった山で「舟見岳」とも呼ばれてきました。深田久弥氏は「鞍掛山は大日、富士写ともに江沼三山と称えられ、高さこそ低いがその模型的に整斉した山容は普くし衆眺めを集めている」と山岳雑記帳に記されています。稜線伝いには平安時代に黒岩にあった洞窟に三人の修行僧(童子)がいたことから山名がついたといわれる三童子山標高約493mがあります。当時の那谷小学校滝ヶ原分校の運動場から見える鞍掛山の雄大な形は小さいころから慣れ親しんできました。若いころ青年団団長として、昭和44年に三童子山から鞍掛山へ縦走出来るスカイラインという登山道開設作業が初めての関わりでした。

私の住んでいる滝ヶ原町は現在人口173人で高齢化と人口減少も進む中、「滝ヶ原町鞍掛山を愛する会」を平成9年3月に設立しました。会員登録は80名で平均年齢も60歳を超えておりますが、「安全・健康・環境」をスローガンのもと活動しております。登山者の増加による動植物等の自然環境への悪影響を地元住民が危惧し、鞍掛山の自然環境を保護し「豊かな町」として、様々な人々の交流により町の活性化につなげようと設立したことがきっかけです。さらに、鞍掛山・三童子山は里山で昭和の30年代まで炭焼き、薪能、椎茸栽培などの資源を活用し、生活の場になっていましたが年々高齢化も進み荒れてきている中で山の伝統がある地域の財産、お宝としてこの山を守ることが重要と考えて活動に入ったわけであります。

鞍掛山遠望

「安全・健康・環境」をスローガンのもと活動

設立以来今年で23年になりますが具体的な活動を紹介します。
① 登山道や周辺の環境整備活動
草刈り、除伐、登山道整備、動植物を保護する環境づくり(ササユリ、ブナ、夏ツバキ等)
② 全国鞍掛山交流登山
全国に同じ名前の「鞍掛山」が21ケ所あります。会員で登山して全国制覇し、各地の「鞍掛山」を守る人たちとの交流が出来ました。
③ トンボの楽園(鞍掛山近くのビオトープ)の環境整備活動
・ハッチョウトンボやホトケドジョウなど希少動植物の保護や観察会実施
④ ボランティアガイドの育成活動やイベントで安全・安心の普及活動
・安全・安心の登山、普及、魅力発信など講座実施
・山を通じての健康増進活動としての健康登山の定期的な開催
⑤ 地域内のボランティア活動
・登山道路や貴重なアーチ型石橋周辺の保全活動
⑥ 上記の活動を進める中で、地域の人々に親しんでいただけるようにモニュメントの設置などを少しずつ進めてきました。
・鞍掛山行者岩に「鞍掛山千手観音」や鞍掛山鞍
部に鞍掛山11面観音設置
・鞍掛山・アーチ型由来碑設置や鞍掛山「別名 舟
見岳」由来碑設置
・滝ヶ原里山マップ作成や安全登山へ登頂距離、
座標記載識別看板設置
・「山地里山研修会」や子供たちと環境教育体験
活動を実施 「鞍掛山の源流を探して」

これらの活動が評価されてきていることは私たちの誇りでもあります。
平成23年 小松市 『こまつエコ大賞』
平成26年 環境省 『生物多様性保全上重要な里地里山』に認定
平成29年 石川県 『いしかわ森林環境功労者表彰』
平成29年 一般社団法人全国森林レクレクレーション協会
『森林レクレーション地域美化活動コンクール』協会長賞 受賞
令和2年 北陸農政局『豊かなむらづくり』北陸農政局長表彰 (滝ヶ原町内会として受賞)

市民健康登山

地元産の滝ヶ原凝灰岩を使用したモニュメントの設置

次に、私たちの活動で特筆すべきことが3つあります。

① 一つはスタート時点から開催している鞍掛山の定期登山でイベント名を『秋の鞍掛山健康登山』して五感を活用し、自然環境と景観を楽しみ、登ることで筋力を養い、健康に過ごすことを目的にもしております。
登山愛好家は子供達を含めて毎年増加してきており、最近では県外からの愛好者も多く年間1万人に達してきております。愛知県から「一宮市から早朝出発で山代温泉に泊まります。急遽この登山を計画し、紅葉には少し早いけど起伏に富んだ良い山です。好天の下楽しい山歩きが出来ました。この山を愛し、いつも整備している地元の方々に御礼申し上げます。

② 二つ目は自然環境保護としての発信であります。平成22年に実施した『鞍掛山の源流を探して』というイベントで環境教育の一環で鞍掛山の源流から水路を下りながら宇谷川、動橋川経由、柴山潟を見て海岸線まで水の流れ、水量、ゴミなどを五感で体験してきました。この体験活動で子供たちが感じたことは少しの水が段々多くなりやがてゴミ等が海岸でも増えることです。この時子供たちの発想は「振り返り」でゴミ取りロボットを作ればという考えでした。一滴の水でも大切にしてゴミを流さない、汚さないことです。私たちも気づかされました。山を大切にすることは水を大切にすることだと。山と海は繋がっており、山を守ることは海を守ることだと実感しました。

③ 三つ目ですが、これらの体験から地元産の滝ヶ原凝灰岩を使用したモニュメントを滝ヶ原のシンボルとして平成24年に設置しました。
SDGsでは大切な目標として取り上げられていますが、水と環境、景観を大切にして地球を守ることを里山から発信しようと取り組みました。碑の文言は「鞍掛山・三童子山から注ぐ水はアーチ型の石橋に流れ、そして日本海を経て地球全体へつながっています。滝ヶ原町では、環境、景観を大切に、然と共存、共生を全世界へ発信するため、この碑を設置します」

町の入り口の石碑

「山の学校 鞍掛山」完成

さて最後になりますが、最も新しいニュースです。

足掛け3年で待ちに待った「山の学校 鞍掛山」がようやく令和2年10月に完成いたしました。市、県、地元皆さんを始め全国からの温かいご支援のもと、「山の学校 鞍掛山」と施設を命名しました。
市民が楽しみながら学べるようにとの願いを込めました。施設内に登山道のマップ、鞍掛山の魅力、四季の動植物の写真、鞍掛山キャラクターの四季の登頂記念スタンプ等があります。白山眺望憩いの広場の整備、無事に帰ること願って語呂合わせし滝ヶ原凝灰岩で制作した「無事カエル」の置物制作、頂上の方位盤などを整備しました。

課題としては、会員の高齢化と若い人に如何に山の文化を伝えてゆくかですが、今回の施設や他の整備により鞍掛山を通じて環境教育の拠点として、子供たちにこの「山の学校 鞍掛山」を拠点に環境教育をも充実させて、発信してゆきたいと思っています。

また、鞍掛山を中心したスローツーリズムを市、県、地元団体の三位一体で企画しようと頑張っています。滝ヶ原町鞍掛山を愛する会のこれまでの経験を活かして、一泊二日コースを検討しています。

A 地元のお米や山菜、自然の恵みを楽しむコース
初日は自分たちでお握りを作り鞍掛山へ登山、山で昼食し下山後は地元の民家を再生したコッテージで一泊、あくる日は山菜ウォークして採取したものを試食会で楽しむ。
B 滝ケ原と歴史遺産巡りと鞍掛山登山コース
初日は滝ヶ原の歴史遺産巡りその後里山自然学校こまつ滝ヶ原で、地元で採れた農産物を利用した里山定食を味わい午後からは滝ヶ原の凝灰岩で彫刻体験 夕食はコッテージで、あくる日は鞍掛山登山で自然観察会を楽しむ。

終わりに、鞍掛山を通じて環境を守り、自然の大切さ、安全・安心で健康推進を図ることが山の文化を守ることだと確信しております。今後ともよろしくお願いします。

山の学校

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