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山の日レポート

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自然がライフワーク

登山で病気に負けない体をつくる(2)「 健康登山塾」とはどのようなものか

2024.02.05

山の日通信員
日本山岳会 群馬支部山の通信員G
日本山岳会群馬支部根井

健康登山塾のプログラム構成

健康増進につながる登山を実体験していただくために、著者は自身の所属する日本山岳会群馬支部、地元自治体や大学、新聞社などの協力を得て「健康登山塾」を開催してきました。塾といっても、優秀な登山家やトレイルランニングの選手を養成するのが目的ではなく、自分自身の健康管理に役に立つ登山の習慣をつくることが目的です。各年とも、地元の山々を歩きながら健康増進を図り、山登りの実力アップも合わせて図ろうという趣旨で半年間の活動計画を練っています。そして、本書の前作、『登山を楽しむための「健康トレーニング」』(上毛新聞社 2017年発刊)をテキストとしています。
 街中の公園歩きでは物足りなくなった人、そもそも運動する習慣がなかった人たちも対象にしているので、1年目の最初の集まりでは、利根川の河川敷から高台の城跡まで広がる前橋公園を利用し、上段公園から利根川河岸まで2周のウオーキングを行いました。2年目の初回は会場を高崎市郊外の大学施設に設定し、運動場脇の水路沿い歩道から校舎の3階までの階段を歩きました。また、学生実習用のトレーニングジムも利用しています。いずれも、市街部の公園や街中のビル、トレーニングジムで、登山に類似の坂道歩行が可能であることを実感してもらっています。

市街地の公園でも坂道歩きの練習

 街中での坂道歩行練習以降の回は、赤城山や榛名山など、地元を代表するアクセスのよい山の初心者コースで開催しています。各回の予定日が荒天に見舞われた時は、当初のコースを変更してより安全度の高い登山コースの往復としますが、継続性を重じているので、雨天でも開催することを原則としました。また、第2回と最終回は全く同一のコースで行い、約半年間の塾での活動が健康増進につながったか評価してもらっています。
 各登山は上り下り合わせて2~3時間ですが、各回のコースの特徴に合わせて特別に意識すべき健康管理上の注意事項を設定しています。参加者には課題を意識しながら歩行することで、安全で効果的な歩き方のポイントを理解してもらいます。コース概要ならびに諸注意の説明が終わると、準備体操を全員で行います。そして、活動前後と活動中の数回、心拍数や血圧の測定を行います。また活動の前後で簡易な着地圧(足を地面に着く時の力の強さ)の測定も行います。登山中は医師・看護師を含む運営スタッフが参加者に随時アドバイスを行い、下山後、各自で整理体操をしながら、血圧などの測定値の評価、塾長の総括コメントを聞きます。塾長は毎回、「週に3回程度の日頃の運動」を継続するように強調しています。これは、日々のトレーニングが健康増進には最も重要であり、塾開催時の山での運動は確認作業であることを理解してもらうためです。
各年度の最終回は「まとめの会」として行い、個人および参加者全員の集計・解析したデータを成績表として修了証とともに渡しています。意見交換と交流の継続性を目的に、参加者各人の感想やその後の方針なども全員に一言ずつ発言してもらっています。

登山中も血圧や心拍数を測定して、心臓や血管への影響を認識する

塾で強調する健康管理上のポイント

■ 塾で強調する健康管理上のポイント
 「健康登山塾」では年間の各開催を通じて、いくつかの健康管理上のポイントを参加者に指導しています。以下、それらを紹介します。
1 山での運動と、週3回以上、1回30分以上の自宅周囲でのトレーニングを組み合わせましょう。
2 準備体操をしっかりして、上り始めは遅いペースから徐々にスピードを上げていきましょう。
3 歩きながら時々心拍数をチェックして、上りの傾斜と心肺機能への負荷の関係を理解しましょう。
4 山の上りでは大休止せずに歩き続けられるようにペースを調整しましょう。そのためには、個人ごとの  
   適正心拍数の範囲で運動負荷をかけましょう。
5 山の下りでは、膝や足の関節への負荷を抑え、足の着地で滑ることがないように、一歩一歩確実に足を  
   着地させましょう。
6 膝や足の関節に不安がある場合、着地面が安定しているところでは、ストックなどの補助具を積極的に 
   活用して、バランス保持と、下肢関節への負荷の軽減を図りましょう。
7 転倒防止のため、坂の下りでは膝に余裕を持たせ、重心を低目に保ちましょう。
8 上り下りが交互に登場するコースでは、小まめにペースを調整して、疲労がたまらないようにしましょ 
   う。
9 山の事故は下りで多く発生することを理解し、下りでも上りと同程度の時間をかけ、慎重に足を運びま
   しょう。
10 気象条件や地形の特徴に応じて、着衣やカロリー摂取の調整できめ細かい体温・栄養管理、脱水予防を行
いましょう。

活動開始は準備体操から

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