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『東京超低山』第6回 築山(2)

2024.05.03

山の日アンバサダー
イラストレーター
中村みつを

「三笠山」

 都心のど真ん中といえば皇居あたりだろうか。そのお隣に鎮座しているのが三笠山だ。
「えっ、それってどこなの?」と思わず問い返すかもしれない。答えは日比谷公園。明治36年(1903)に開園した日本初の洋風近代式公園内にその山があった。

イラスト:中村みつを

 日比谷は江戸期の前までは「日比谷入江」が広がる浅瀬の海だった。現在の銀座が砂州の突き出た半島で江戸前島と呼ばれていた頃のこと。日比谷は徳川家康の命により、江戸開府から始まった江戸大改造による埋立されたものだった。
 当然、埋立地に山などあるはずもない。そう、三笠山は公園化に伴い造られた築山になる。日比谷公園正門を入るとサラリーマンの憩いの場になっている噴水広場がある。三笠山はそこから少し北に向かった祝田門の近くにどっしり構えている。
 三笠山の成り立ちは公園造成時に雲形池などから掘った残土を盛った築山で、三つの笠を伏せた形からその名が付いた。残念なのは大正になって、三つの笠のうち、ひとつが削られてテニスコートになったこと。残りふたつの笠になったが、「三笠山」の山名は引き継がれている。

 ふたつの笠のうち、大らかに裾野を広げ優美な山容を見せているのが、標高9mの本峰になる。もうひとつは、本峰から尾根上につながるほんのわずかな小山。たぶん頂上部は削りとられたのだろう。アメリカから寄贈された「自由の鐘」がひっそりと建っている。

 正面登山口は左右にそれぞれ石段になって中腹で合流して山頂に上がっていく。山腹にはよく手入れのされたクロマツやモミジが植えられ、明治の名残をとどめる洒落たアーク灯もあって、格式の高い山というのが見てとれる。一方、山頂は岩塊に囲まれまるで城砦のようにみえる。

 山頂からの眺めはいい。皇居や丸の内界隈がぐるりと見渡せる。かつては帝国ホテルの隣に鹿鳴館も見えたはず。下山後は、日比谷公園開園時にオープンした日比谷松本楼でゆっくりしていきたい。

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