山の日レポート
通信員レポート「これでいいのか登山道」
【連載27】これでいいのか登山道
2024.09.24
連載27回目は登山道法研究会の大野航輔さんに綴ってもらいました。大野さんは山梨県小菅村の地域林政アドバイザーとして活動されていますが、登山等の注意喚起看板を設置されたことをご報告いただきました。
大野航輔 (小菅村地域林政アドバイザー、登山道法研究会)
8月11日、山梨県小菅村でNPO多摩源流こすげと上野原警察署が協力して、道迷い防止のための看板設置が行われました。この取り組みは、今川峠付近で登山道から外れて転落事故が多発していることを受け、登山道の整備の一環として実施されました。設置作業はe-bikeを使用し、計4カ所に看板が設置されました。また、看板設置後のメンテナンスや設置箇所の情報共有の体制整備も進めており、今後は登山道の倒木処理や看板更新を含む整備活動や、整備情報のデジタルマップ反映と関係者への共有、その後、登山者への配信を目指しています。
8月11日(日)山の日、山梨県小菅村にてNPO多摩源流こすげと上野原警察署が合同で、道迷い予防看板の設置を行いました。近年、小菅村と丹波山村が接する今川峠付近にて、登山道から作業道へ迷い込んだ結果、マリコ沢付近の急斜面で転落する事故が相次いで発生したことを受け、登山道整備の一環として実施しました。
NPO多摩源流こすげは、今年度、行政と民間が連携し村内の登山道管理・整備を行う協働型管理体制の構築を実行しており、国立公園基金事業を活用しています。
看板設置作業は、村内でMTBレンタルを行っているKosuge MTB Baseから現場まで、e-bike(MTB)でアプローチを行い、上野原警察山岳救助隊の皆様、小菅村地域林政アドバイザー、林業に従事するマウンテンバイカーの6名にて、13時〜16時の3時間で実施しました。
設置箇所は、小菅村と丹波山村の登山道が交差する大丹波峠から作業道を約800mを上がった箇所で、この区間は登山道が作業道開設により消失し、作業道を歩行する区間となっており、さらに作業道が二股に分岐している複雑な箇所となっています。正規ルートは西から東へ伸びる作業道ですが、北から南へ伸びる作業道があり、登山者はこの道を誤って下り、急な下り斜面へ到達した結果、引き返すことが出来ずに進み続け、滑落していると予想されます。看板は分岐を起点に作業道終点まで3箇所と、分岐の上部にある尾根へ1箇所、合計4箇所設置しました。
現在、私や他のメンバーがこの作業道を利用して森林調査や間伐施業を行なっていることから、山林所有者への承諾確認もスムーズに実施出来ました。また、看板設置後のメンテナンスや状況把握については、作業でこのエリアを利用していることから、日常的に確認が出来ます。
また、現場の作業道は最近の雨により急速に洗掘が進行しており、4WDの車両でも苦戦する状態になっていますが、e-bike(MTB)を利用することで、細やかなルート取りができ、下りだけでなく、登りも一定速度で徒歩より速く移動できるため、3時間の工程で作業を完了することが出来ました。現状では車両でアプローチするよりも、短時間でより広いエリアにアプローチ出来るため、e-bike(MTB)はとても役に立ちました。
こうした活動は、一昨年から不定期の勉強会を村内で開催し、登山道管理・整備の課題や遭難発生状況、作業道をe-bikeでアプローチできる箇所など、情報共有と検討を重ねてきた結果、今回の活動に結実した次第です。
今後は、登山道沿いの倒木処理や劣化した看板更新、洗掘箇所整備等を行いながら、整備が必要な箇所及び整備が完了した箇所の情報収集を行い、QGISへ反映した上で、地図アプリ(Avenza)で役場、警察等関係者と共有化を図る取り組みを進めていきます。既存の登山道地図には作業道が反映されていない箇所があり、今回、小菅村で作成している登山道地図とGISで作成した作業道地図を重ねることで、両者の位置と関係性を把握することが出来ました。こうした情報が整備された段階で、登山者へ地図データの配信を実施し、より現状に即した情報にアクセスしてもらい、注意喚起や登山体験の充実に役立ててもらう予定です。
・協力
上野原警察署山岳救助隊の皆様、林業に従事するマウンテンバイカー(清水岳人、野間大介、大沢尚平)、山林所有者様、小菅村役場様、Kosuge MTB Base様
・コーディネート・撮影
小菅村地域林政アドバイザー(大野航輔)
・事業運営管理
NPO多摩源流こすげ(石坂真悟)
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送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで
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