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山の日レポート

山の日レポート

山の日インタビュー

「縦横無尽 雨宮節 沖縄と山を語る」#2

2023.02.01

全国山の日協議会

雨宮節さん(登山家)

【山の日インタビュー】 この人に聞く「山」の魅力

雨宮さんは2年前までの12年間沖縄に住み、沖縄県山岳・スポーツクライミング連盟の会長を務めていました。
登山家の雨宮節さんに沖縄の山々そして自然の魅力をお聞きしました。
タイトルは「縦横無尽 雨宮節 沖縄と山を語る」。
これらを山の日全国大会に向けて連載していきます。

ダウラギリサウスピラーにて

山との出会い:子ども時代

鹿野 雨宮さん、生まれは1936(昭和11)年ですよね。
雨宮 そう。だから87歳になったわけ。戦争の前のことなんて、今の若い人にはちょっと想像がつきにくいよね。

鹿野 育ったのは東京の都心部ですか?
雨宮 五反田のあたりです。

鹿野 あんまり自然が豊かとはいえないようなところ・・・。
雨宮 でも、今も桜並木で名所になってる目黒川の近く。あそこは川から道のあるところまで、高さ5メートルくらいの護岸の石垣があるんだけど、小学生のころはそこをよく登ってた。友達が登れないとこを下駄で登って自慢したりね。川だから大きなヤンマが飛んでて、それを追っかけたり、けっこう楽しかったよ。

鹿野 じゃ、クライミングの練習をしてたことになる。
雨宮 もちろん、まだそんなつもりはなかったけどね。

鹿野 山に関心を持ち始めたのは、いつごろからですか?
雨宮 戦争が終ったころ神田のほうに引っ越して、中学校は一橋中に行ったんだけど、そこの担任の先生が山好きで、ときどき連れて行ってもらって、それからだね。そのとき三ッ峠から見た雪の富士山のことはよく覚えてる。

鹿野 で、中学を卒業してすぐ就職したんですね。
雨宮 洋紙を扱う店にね。あの辺は本の町って言われてるけど、書店だけじゃなく、出版社とか印刷屋、製本所なんかもたくさんあって、そんな関係で何となく。まあ当時は中卒で就職って、そんなに珍しくなかったからね。

三つ峠にて。左から3人目が雨宮さん

山とのかかわり

鹿野 そういえば同世代の山学同志会の小西(政継)さんなんかも麹町中学を出て、印刷屋に就職したはずですよね。で、初めは一人で山に行ってたんですか?

雨宮 そう。初めのころは運動靴で行くようなハイキングからね。それから次第に丹沢の沢登りとか三ッ峠の岩登りなんかを始めて、しだいにに谷川岳の本格的なルートにも行くようになったんだけど、そのころはわらじや地下足袋を履いて行ってた。なにしろ本格的な登山用具は高くて手が出なかったからね。
たとえば冬山にはいていくような登山靴は8000円か9000円くらいしたけど、中卒の初任給じゃ、片足分にもならないんだから。                    
で、よく通ったのがアメ横の、米軍の放出品を売ってる店。朝鮮戦争でアメリカ兵が使った装備なんだけど、シュラフなんか戦死者の遺体を運ぶのに使ったものだとか言われてた。サイズも馬鹿でかいし、重いし、中身は羽毛って言ってもダウンにけっこうフェザーが混じってる。ヤッケなんかも素材は綿でちょっと濡れて気温が下がったら、ごわごわになって扱いにくいったらない。でもとにかく安いのがありがたかった。

一の倉沢出合

鹿野 大学の山岳部なんかだと、長期の合宿もあるし、基礎から訓練されるわけだけど、そのへんは一人だといろいろむつかしくなかったですか?

雨宮 たしかに長い休みはとれないし、技術や知識を効率的に身につけるのはむつかしいけど、けっこう本を読んで勉強もしたし、自分で考える癖がついたのはかえってよかったのかもしれない。でもやっぱり限界があるよね。あとから考えれば、ずいぶんやばいこともしてたみたいな気がする。
で、ちゃんとした山岳会に入会して基礎からやり直そうと思った。東京雲稜会に入ったのは1958年、22歳のときです。
                

聞き取り、構成:鹿野勝彦(全国山の日協議会 評議員)
(2022年11月21日 雨宮さんの自宅にて聞き取り)
鹿野さんは1970年エベレスト隊、1973年エベレスト隊等に参加。
隊長として1976年ナンダデビ縦走、1984年カンチェンジュンガ縦走隊を率いました。


(あまみや たかし)
1936(昭和11)年生まれ。
1960年代日本での積雪期岩壁登山、そして1970年代にヒマラヤの山々でバリエーションルートからの登攀を競った「鉄の時代」とともに生きてきた登山界のレジェンドの一人です。
2年前までの12年間沖縄に住み、沖縄県山岳・スポーツクライミング連盟の会長を務めていました。

第7回「山の日」全国大会おきなわ2023

今年の「山の日」全国大会(8月11日)は、ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコをはじめとする固有種が多く生息し生物多様性に富んだ地域として2021年世界自然遺産に登録された国頭村、大宜味村、東村のやんばる及び竹富町の西表島が開催地となって開催されます。

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