山の日レポート
山の日インタビュー
【連載⑱】東奔西走 ダルマ・ラマ 富山からネパールと日本、世界をつなぐ
2025.05.01
鹿野 「かつてのネパールの農業は国内での自給用、もっと言えば自家消費用の穀物生産が主だったわけだけれど、人口の増加と都市化が進んで、農業でも商品生産が増えてきた。でもそれにともなって、いろいろ問題も起きているようですね」
ダルマ 「はい。たとえば農地の集約的な利用が進むとともに、化学肥料や農薬の使用量も増えたけれど、それはネパール国内では生産できないから、ほとんどインドからの輸入に頼ってきたわけで、経費もばかにならないし、結果として農地の質が低下したともいわれています。こういう問題は、世界的にはずっと以前から言われていたわけだけれど、それがネパールでも現実になってきた」
鹿野 「なるほどね。でも最近はいっぽうで、果物、たとえばイチゴみたいな有機栽培による高品質の品物が、カトマンズなんかには結構出まわるようになってきましたよね」
ダルマ 「たしかに。でもそれは外国からの観光客や、一部の富裕層がおもな顧客で、農業全体ではまだまだです」
鹿野 「それでは、生産された肥料をどう使ってどんな農業をやるのか、そちらについてうかがうことにしますが、それはダルマさん、というか、葉っぴーファームの現地法人も手掛けることになるんですか」
ダルマ 「肥料がどれくらい生産されるか、コストがどれくらいになるか、まだはっきりはわかりませんが、もちろん葉っぴーファームもそれを購入して現地での農業生産に使うことは考えています」
ネパールで葉っぴーファームが野菜栽培を計画している農地(2025年1月)
鹿野 「具体的にはどんなことを?」
ダルマ 「もちろんこれまで手掛けてきたエゴマやソバなんかにも使うことになるでしょうが、新たに想定しているのは、プラントの近くの農家と組んで、ゴボウやダイコンのような野菜を栽培し、それを現地で一次加工して、日本に出荷することですね」
ネパールで葉っぴーファームが野菜栽培を計画している農地(2025年1月)
鹿野 「ゴボウやダイコンですか。ダイコンはともかく、ゴボウというのはこれまでネパールでも見たことがないし、なかなか想像がつかないな。それをどんなふうに加工して輸出するんですか」
ダルマ 「まあ、生産したものを日本に輸出するとなると、インドのコルカタあたりに陸送し、そこから船で日本に送るとなれば、少なくとも1か月、なにかあれば2か月くらいかかると見なければといけない。野菜といっても、コマツナみたいな葉物はもちろん、キャベツみたいな、これは巻物っていうんですが、それももちょっと無理ですよね。
でもゴボウだったらそれくらいの期間は品質をそれほど落とさずに済みます。具体的には、土がついていたら日本に持ち込めませんから、収穫したゴボウを洗って、低温で運べばだいじょうぶみたいです」
ダイコンの収穫(2025年1月)
鹿野 「ダイコンの場合は?」
ダルマ 「ダイコンは生ではむつかしいので、収穫した後、ネパールで切干大根に加工して日本に輸出します。実は今でも野菜は、日本にはけっこう中国なんかから輸入されてますが、輸送費だけでなく人件費まで考えると、ネパールから運んでもコスト面で充分太刀打ちできるんじゃないか。
野菜類は、いま値段が上がっていることが大きな問題になってますが、天候の関係での価格変動が大きいから、供給先を多角化しておくことは、日本にとってもいいことだと思います。
もちろんゴボウやダイコン以外にも、今後いろんなものを考えていくことになるとは思いますが、とりあえずはまずそのへんからって」
鹿野 「そうか。なるほどね。で、量的にはどれくらいを考えているんですか」
ダルマ 「コンテナで運ぶとなると、5トンくらいが単位になるはずですが、目標としては、年間400トンくらいでしょうか」
切干大根の試作品(2025年1月)
鹿野 「何か月かしてダルマさんのところへ来ると、以前には想像もしてなかったような新しい話が次々飛び出してくるから、そのたびにびっくりします。目が離せないというか。ネパールのイメージもまたひろがっていく。これからもいろいろ話を聞かせてください」
ダルマ 「私もコマツナのアルバイトを始めたころは、こんなことになるって全く考えていませんでしたから、びっくりしてます。でも、だから面白いですよね」
葉っぴーファームでのダルマさん(2025年3月29日)
※写真 ダルマさん提供
※聴き取り 2025年3月29日 葉っぴーファーム
※構成 鹿野勝彦
RELATED
関連記事など