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山の日レポート

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通信員レポート

山騒ぎ(やまさわぎ)

2023.04.17

全国山の日協議会

鴫谷玉実さんのレポート 第6回

終わってみれば小雪だった今年。例年だと4月中頃まで田畑に雪が残るのですが、2,3月の暖かさでみるみる雪が融け、地面が顔を出したところから次々に山菜が芽吹き始めました。「えっ、うそ、まさか!」と気持ちが季節に追いつかないうちに、フキノトウから始まる山菜リレーがスタートし、例年より半月から一月早いスピードで進んでいっている今年です。

雪の残る中をフキノトウ摘み

本来は今頃がコゴミの最盛期なのですが、日陰以外はすでに大きくなりすぎました。やっと初物のはずのウドも、場所によっては食べ頃を逸してしまっています。ゼンマイも早いものは完全に葉っぱを展開しており、先日は早くもネマガリタケを収穫。季節の進みの早さに正直驚いています。

夕飯用にウド、コゴミ、ネマガリタケ

さて、私の住む地域では山菜採りのことを、「山騒ぎ(やまさわぎ)」というのですが、初めてこの言葉を聞いたときに、なんて良い言葉なんだろうと思いました。冬の間、家の中でじっと蓄えていたエネルギーが、春の芽吹きと共に爆発し、野山を騒ぎ歩く様子が伝わってくる気がしたものです。
もっとも、移住当初は山騒ぎなんてスケールの大きなことはとてもできず、ただ家の周りや、耕作している田畑の周りをウロウロするばかり。どれがゼンマイなのかも分からず、それらしきシダの若芽を採って、村の人に大笑いされたものでした。ウドも、皆から分けてもらうばかりでしたが、だんだんと生えている場所を覚えてきました。

ウドが出てきた

「今まで○○さんに頼んで山菜を採ってもらっていたのだけど、年をとって採れなくなったと断られたので、代わりに採ってくれないか」という話もたまに来るようになりました。それでも、「コゴミが20㎏欲しい」とか「ゼンマイを乾燥重量で1kg(生重量だと10kg以上!)」といった要求量に応えられる気がせず、もっと山を騒いで、出る場所や時期について知らないと村人とは名乗れないなと思うこの頃です。

熟練のゼンマイ揉み

山菜を見ると、反射的に手が伸びるようになってきましたが、どうしても採るかどうか悩んでしまうものがあります。カタコと呼ばれるカタクリのつぼみです。花が開く前、つぼみがツンと上を向いて膨らんでいる様子が筆のように見えるため、筆カタコと呼ばれ、酢味噌和えで親しまれています。しかし、カタクリなど全く咲かない神戸で生まれ育った私にとっては、貴重な春の野草。しかも花を咲かせるまでの年月を思うと、なかなか摘みとれません。
その点、我が家の娘たちは村育ち。カタクリは踏み分けて歩くもので、おままごと用に手あたり次第摘み取ります。私が「もうそれくらいにしたら、可愛そうだよ」といったところでどこ吹く風。「これはご飯なの。ピンクでキレイでしょ」と小さなバケツ一杯に摘み取り、細かくちぎって遊び始めます。この子たちはいったいどれほど山を騒ぎ歩くようになるのだろうと今から楽しみです。

カタクリ摘み

森林の恵みに感謝し、自然とともに生きる

新潟県上越市の石谷集落に移住し家族と共に農業を営んで8年目になる鴫谷玉実さんからのレポートです。
第1回は、初夏の笹仕事 2022.07.07
第2回は、夏野菜三昧 2022.08.09
第3回は、山の稲刈り 2022.10.18
第4回は、雪の中での暮らし1 2023.1.24
第5回は、雪の中での暮らし2 2023.03.01

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