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山の日レポート

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通信員レポート

福井県を代表する山 荒島岳

2025.06.29

全国山の日協議会

 荒島岳(あらしまだけ)は、福井県大野市のほぼ中央に位置し、市内のどこからでも見ることができます。地元の小学校の校歌の歌詞に「荒島岳に雲晴れて」や「雲飛ぶよ荒島の峰」などと登場する登場する地元を代表する山です。
 福井県内では、唯一日本百名山に選定されていることや、登山ルートが4つあること、季節ごとにさまざまな景色を見せてくれる事などから、多くの登山者が訪れる、県内有数の山になっています。
 標高は1,523mで、百名山のなかでも低い方ですが、独立峰であり、途中に山小屋などの宿泊・休憩する施設もないため、思った以上に体力が必要です。

市街地から見た荒島岳

荒島岳の歴史

 山の歴史は古く、平安時代に書かれた「延喜式」には「荒嶋神社」の記載があり、別の書物には、継体・安閑・宣化・欽明・敏達天皇の臣、物部氏の神霊が坐す山と書かれています。
 また、ほかの書物には、荒島岳は仙山であって、残夢という名の仙人が住んでいたと伝えていますが、この残夢とは、元暦(1184~1185)のころの常陸坊という者のことであって、物部氏の神霊を祀るのが荒島神社であり、大野郡最高の山であって、日本海を航行する船が三国湊に入港するときの目印になっていたと記しています。山頂には、今も数体の石仏が安置されています。そのほか「嵐間ヶ嶽」、「越の黒山」などといった記載もあり、時代や場所でさまざまな呼び方がされ、注目されるとともに、畏敬の念を集めてきました。

 地質は、深成岩、火山岩・火山砕屑岩からなっていますが、その基盤には、恐竜の化石やアンモナイトの化石などが多く含まれている古生代後期の変成年代を持つ変成岩と、それに貫入したジュラ紀の花崗岩、それらを覆う後期ジュラ紀~前期白亜紀の手取層群があります。
荒島岳の東側に位置する大野市下山は、明治時代に日本で初めてアンモナイトの化石が発見された場所で、今もアンモナイトをはじめとする化石が見つかっています。

 人々とのつながりは古く、霊峰白山を開いた泰澄に関する伝説が残るなど、その山容などから古くから信仰の山として崇められてきました。一等三角点のある山頂には、今もなお荒島大権現奥の院が祀られています。

荒島岳 山頂石仏

荒島岳の地理

 独立峰のため山頂からの眺めは抜群で、周囲をさえぎるものがなく、独立峰ならではの大パノラマが広がります。白山、経ヶ岳、能郷白山といった周囲の山々だけでなく、北アルプスや乗鞍岳、御嶽山まで臨むことができます。標高700メートルを超えるあたりから続くブナ林も魅力の一つで、新緑や紅葉の時期は、目でも楽しむことができます。荒島岳の南東側から東側を流れている九頭竜川は、その激しい流れにより形成された九頭竜峡谷があります。春先に登山道脇ではイワウチワ、カタクリ、シャクナゲなどの花が見られます。山頂から南斜面には、小規模ながらお花畑が見られ、ハクサンフウロ、タカネマツムシソウ、カライトソウ、コバイケイソウ、クガイソウ、シモツケソウ、タテヤマウツボグサ、リョウハクトリカブト、シオガマギクなどが咲きます。

 また、令和3年(2021)に、荒島岳の北側に道の駅「越前おおの荒島の郷」が開駅し、登山用品や地元の特産品の販売、観光情報の提供など、荒島岳登山の起点となっています。

ブナの登路

荒島岳(道の駅 荒島の郷)

登山コースの紹介

荒島岳に通じる登山コースは、次の4コースがあります。

【勝原(かどはら)コース】 登り3時間30分 下り2時間30分
国道158号沿いにある旧カドハラスキー場の駐車場から、スキー場のゲレンデ跡を経由して登るコースで、4つの中でも最も多くの人が上るコースです。
旧スキー場の急斜面のゲレンデ跡を登りきると、リフト降り場跡に到着します。そこから尾根伝いの険しい登山道を進むにしたがい、みごとな樹形のブナの原生林をしばらく登って行くと、やがて傾斜が緩くなり、視界が開けシャクナゲ平に到着します。ここは、中出(なかんで)コースとの合流地点でもあり、少し下ると、佐開コースからの道と出会うため、休憩ポイントとして利用されています。そこから先は、岩場が多くなる通称「もちがかべ」と呼ばれる滑りやすい急登になります。クサリやハシゴの連続を通過し、傾斜が少し緩くなって、前荒島、中荒島の小ピークを過ぎるころから、見晴らしも良くなり、広い頂上にたどり着きます。

【中出(なかんで)コース】 登り3時間40分 下り2時間40分(冬期閉鎖)
中出コースは、深田久弥が登ったコースと知られています。登山口から道標に従って進み、途中3~4回砂利道の作業道を横断し、登っていきます。急登を過ぎ、しばらくすると気持ちの良い緩やかな尾根の西側を巻いて進み、小荒島岳への分岐点に到着。左側の細い道を1分ほど行けば、小荒島岳の山頂に立つことができ、そこから眺める荒島岳は迫力があります。分岐点まで戻り、シャクナゲ平までは約20分で着きます。

【佐開(さびらき)コース】 登り3時間30分 下り2時間30分
養魚場から先の作業用の林道はかなり道が険しく、4WD車でなければ通行は困難で、場合によっては土砂崩れなどで車両が通行できない場合があります。標高850mの登り口からは登山道となり、植樹された杉の中へ入り、九十九折れの道を進み、少しずつ傾斜が緩くなり、気持ちの良い樹林帯に入り、しばらくすると対岸には荒島岳西面の横谷や大ワサビ谷の荒々しい地形が望めます。シャクナゲ平の下部で、中出・勝原コースと合流します。

【下山コース(新しもやまコース)】健脚向け 登り4時間40分 下り3時間10分
急なのぼりが続く健脚向けコースで、途中ロープ等が取り付けられているが滑りやすいため注意が必要です。和泉地区側から登る唯一のコースです。

(荒島岳)山頂

荒島岳(山頂から冬)

小荒島からみた荒島岳

*****

荒島岳の歴史や登山について、大野親岳会の佐々木伸治様よりご紹介いただきました。
四季と共に様々な魅力をもつ荒島岳。独立峰の景色を楽しみに、これからの季節に訪れてみてはいかがでしょうか。

荒島岳山頂ほこら

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