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山の日レポート

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通信員レポート

ゼロカーボンパーク全国第1号登録 ~乗鞍高原の取組について~

2021.08.18

山の日通信員
一般財団法人 自然公園財団上高地支部
加藤 銀次郎

環境省中部山岳国立公園管理事務所の服部管理官から、国立公園での「ゼロカーボンパーク」という極めて先駆的な取り組みについて、投稿をいただきましたので紹介します。

(ここから)
こんにちは!環境省の服部です。
 私は、中部山岳国立公園の乗鞍・白骨地域担当の国立公園管理官として、国立公園における自然環境の保全や利用推進などの業務に日々取り組んでいます。
 つい先日に山の日を迎え、夏の折り返し地点を過ぎたところですが、松本市の標高約700mにある事務所でもまだまだ暑い日が続いています。

「昔はクーラーはいらなかったのになぁ」という地元の方の声も聴きますが、今ではクーラーがないと昼間はすごく暑く、さらに梅雨の終わり頃には毎日のようにバケツをひっくり返したかのような夕立が降るなど、ここ数十年で気候変動の影響が目に見える形で表れてきているのではないかと思います。

実際に「信州気候変動適応センター」が公表した「長野県の気候変動とその影響」(令和2年3月)を見てみると、100年あたりの年平均気温の変化率が、松本地域では2.0(℃ /100年)だったことが報告されています。

出典:気候変動の観測事実/信州気候変動適応センター(令和2年3月)

同報告の中で、気候変動の将来予測もなされていますが、長野県全域で気温が上昇していくことが予想されています。気温だけでなく、降水量や積雪深、さらには生態系や農作物の品質などの変化も予測されており、非常に興味深いレポートとなっています。

出典:気候変動の将来予測(気温)/信州気候変動適応センター(令和2年3月)

また長野県だけでなく全国的にも気温上昇が観測されており、激甚な豪雨災害や猛暑など気候変動が一因と考えられる事象が発生しています。

そこで政府は、世界及び日本国内の気候変動対策として、令和3年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする(すなわち2050 年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す)ことを宣言しました。

環境省においては、脱炭素社会の実現に向けた様々な取組を行っておりますが、「山」と関わりの深い国立公園行政においても、令和3年3月に「ゼロカーボンパーク」という新たな取組を開始しました。

ゼロカーボンパークとは、国立公園の脱炭素化を目指すとともに、脱プラスチックも含めてサステナブルな観光地づくりを実現していくエリアのことを言います。

出典:内閣官房HP 地域脱炭素ロードマップ(概要)より

そして、中部山岳国立公園の乗鞍高原地域は、その全国第1号として登録されました!

乗鞍高原では、地域関係者・行政機関等が協働で、持続可能な地域づくりのあり方(目指すべき姿)等を記載した地域ビジョンである「のりくら高原ミライズ」*を本年3月に策定しました。地域の将来ビジョンであるミライズの中で、目標年次も定めたゼロカーボンの取組を推進していくことが重要取組事項として定められたことが、ゼロカーボンパークに登録された大きな要因となりました。

これらのことを契機に、現在地域内では様々なゼロカーボンの取組を推進しています。

①地域の脱炭素に向けた議論

①地域の脱炭素に向けた議論
令和3年6月29日に地域関係者一同が集い、学識者も招いた 「のりくら高原ゼロカーボンフォーラム」を開催しました。今後もゼロカーボンを推進するため、定期的にこのようなワークショップ等を開催していく予定です(次回は9月頃予定)。
今後は、地域関係者及び関係機関の協働により、地域エネルギー消費量等を把握するためのアンケート調査を9月頃から実施し、それらの結果を基に、今年度中に具体的な脱炭素ロードマップの策定を予定しています。

のりくら高原脱炭素フォーラムの様子

②サステナブルツーリズムの試行的取組

のりくら観光協会が主体となり、脱炭素・脱プラの要素をツアーコンテンツに盛り込んだ「サステナブルキャンプ」を実施し、20~30代のモニターから乗鞍高原のサステナブル化に向けたフィードバック及び意見交換会を行いました。
また、令和3年秋頃に、移動はEVバスを利用する、食事は地産地消のものを採用するなど、究極のサステナブルの実現を目指したエクスカーションの実施も目指しています。

のりくら高原サスティナブルキャンプの様子

③脱炭素の取組の実践

既にゼロカーボンに配慮した取組を率先して実践しているお宿やアクティビティ事業者もありますが、地域的な取組としては、アウトドア企業とコラボしたマイボトルを販売し、脱プラの取組を推進するほか、今後は脱炭素二次交通システムの構築を見越したE-bikeサービス等の導入などを検討しています。

E-bikeの利用状況(左) コロンビアと提携したマイボトルの販売(右)

乗鞍高原では、このように様々な脱炭素の取組を地域関係者の皆さんと協働により始めました。

ゼロカーボンパークを目指すにあたってまだまだ整理・検討すべきことがたくさんありますが、乗鞍高原では全国第1号登録地としては、観光地的視点、経済的視点、レジリエンス的視点など様々な観点から脱炭素地域の実現を目指していきます。

環境省中部山岳国立公園管理事務所としては、のりくら高原ミライズの取組事項の実施主体であるのりくら高原ミライズ構想協議会の協働事務局の一員として、各種取組の進捗管理を行うほか、地域関係者との連絡調整や、民間企業と乗鞍高原の脱炭素についての連携した取組の実施など、脱炭素の取組の支援を行っていきます。
(ここまで)

とても素晴らしい取り組みだと改めて感じます。
私たちも今後の進展に注目しながら応援していきたいと思います。

地域材(シラカバ)を用いた登山道整備を行う服部管理官

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