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山の日レポート

山の日レポート

日本山岳会『山』より

「夏山フェスタ」、山の日制定が追い風に

2021.11.01

全国山の日協議会

地域発「山の日」レポート 日本山岳会東海支部 恒成秀洋

今月は毎年6月に愛知県名古屋市で「夏山フェスタ」を開催している公益社団法人日本山岳会東海支部 恒成秀洋さんに綴っていただきました。

第2回夏山フェスタに参加した谷垣会長(左から2番目)

正しく山と向き合える情報を発信するイベント

私たちは毎年6月、「夏山フェスタ」という登山愛好家のためのイベントを名古屋で開催している。初めて開催したのは2013年。安全登山のセミナーを中心にスタートしたが、山での事故が目立っていたこと、そして何より山の日制定の動きが本格化していたことなどから、回を重ねるごとに規模が拡大している。今後も山の日の意義をふまえ、登山愛好家たちが正しく山と向き合える情報を発信するイベントにしたい。

きっかけ

夏山フェスタのきっかけは、十年ほど前、ある会話の中で「登山愛好家の多くは、漠然とした不安を抱えて山に登っているのではないか」といった話が出たことだった。
山岳事故の報道を見ると、遭難者は圧倒的に中高年が多い。しかも、その多くは山岳会などの団体に属していないという。そのため山に関する基礎的な知識は本やネットからしか得られない。誰かに教えてもらう機会も少ない。
一方、山に登る若い人も目立ち始めていた。“山ガール”という言葉が使われ始めたのもこの頃。当時、私は会社でイベントを担当する部署にいたことから、「山の関連団体などの力を借りて、山に関する勉強の場を提供できないか」ということになり、関係者を訪ねてみることにした。

国民の祝日『山の日』制定

タイミングも良かったようだ。検討を始めた2012年当時、日本山岳会の会長は名古屋の尾上昇氏。尾上氏に相談し、協力をお願いしたところ、「今、山の団体が協力して国民の祝日『山の日』制定に向けて活動している。機運を盛り上げるイベントになるのではないか」と言っていただき、日本山岳会東海支部の全面協力のみならず、実行委員長就任まで快諾していただいた。
尾上氏の指示のもと、関係者を訪ねた。この会報誌『山』の編集人でもある節田重節氏(当時日本山岳会理事)、「山の日」制定協議会の代表幹事だった成川隆顕氏、そして昨年亡くなられたが日本山岳ガイド協会理事長の磯野剛太氏。こうした人たちの懇切丁寧なアドバイスのもと、私たち事務局はセミナーの組み立てだけでなく、山岳関連の企業や山小屋などを回り、協力をお願いし、2013年6月、第1回の開催にこぎつけた。
「夏山フェスタ」のホームページから、この時の報告書を見ることができる。開催のテーマは「『山の日』制定に向け、山の恵みについて考えよう」。セミナーは2日間で10講座。出展者は山小屋や企業など合わせて35小間。良くて3000人と見込んでいた来場者は、初日だけで2800人を超え、2日間では4600人を数えた。中部地区にいかに登山愛好家が多いかということを、改めて知る思いだった。

山の日の意義を伝え、多くの人が安全に山に親しむ機会を提供できるイベント

手ごたえを感じた我々は、翌年の2回目は会場を拡大し、セミナーの数も大幅に増やした。この時は、全国「山の日」制定協議会(現・全国山の日協議会)の谷垣禎一会長に、山の日の意義について語っていただくことにした。当時、谷垣会長は法務大臣。警備や入場導線などで愛知県警と打ち合わせを重ねた。開催直前には、山の日が国民の祝日として決定するなど機運の盛り上がりもあり、出展者は倍増、来場者も6600人を超えた。
順調に回を重ねてきた夏山フェスタだが、ここ2年、コロナで中止している。しかし、前回の2019年には出展者が100を超え、来場者数も9000人に迫るなど、中部地区の登山愛好家には一定の認知をいただいているのではないか、と自負している。
これからも山の日の意義を伝え、多くの人が安全に山に親しむ機会を提供できるイベントになればと思う。一方で、コロナ禍のため山小屋はじめ多くの山岳関係者に様々な影響が出ている。そうしたことも夏山フェスタを通じて正しく伝えていきたい。
(つねなり・ひでひろ、中部経済新聞社社長)

(日本山岳会「山」2021年7月号からの転載です。)
 

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