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山の日レポート

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通信員レポート

みちのく高山植物誌(6)ジャパニーズ・エーデルワイス

2023.07.15

全国山の日協議会

「エーデルワイス」と聞いて皆さん何を想いますか。
「エーデルワイス、エーデルワイス」で始まる「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュースの歌声を想い出しませんか。
 みちのくの山野草探訪者「モウズイカ」さんから今回は「日本のエーデルワイス」にまつわるレポート(第6回)です。

 ▽   ▲   ▽   ▲   ▽

自分は古臭い人間なのか、
「高嶺の花」と言えば、エーデルワイスを連想してしまいます。
エーデルワイス(=セイヨウウスユキソウ) Leontopodium alpinum は
ヨーロッパ・アルプスなどの高所に咲く種類で、日本の山にはありません。
しかし日本には同じウスユキソウ属(Leontopodium)でそっくりの花を咲かせる種類が幾つかあります。
この仲間は(木曽駒ヶ岳を除く)日本アルプスや大雪山には無いのに、
不思議と東北の山には豊富なのです。
そのひとつ、ハヤチネウスユキソウは大型で早池峰山特産、
これは、あとで別機会にじっくりと紹介させて頂きます。

月山のミヤマウスユキソウ

ミヤマウスユキソウ

今回は、やや小型のミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)Leontopodium fauriei の方を紹介させて頂きます。
この種類は東北地方・日本海側の高山に行くと見ることができます。
当初、私はこの花を見るなら山形の「月山」がいいかなと思っていました。

月山のミヤマウスユキソウ

ところが、2019年、朝日連峰「以東岳」に登ったら、そうではないことに気づきました。

 朝日連峰以東岳、オツボ峰付近のミヤマウスユキソウ群生地(2019/06/26)

 ここは自分が今まで見たミヤマウスユキソウの中では最大の群生地でした。
この日、稜線上は猛烈な風で帽子が吹き飛ばされそうでした。

朝日連峰以東岳、オツボ峰付近のミヤマウスユキソウの群生

ミヤマウスユキソウの花は、星のような形をしていますが、
そのつくりはちょっと複雑です。
白い花びらや星のきらめきのように見えるのは萼や花弁ではなく苞葉です。
苞葉は白い綿毛に包まれています。
中心に小さな黄色い球形が数個ありますが、これは一個で花のかたまり(頭花)だそうです。
同じキク科で言えば、でかいヒマワリの花一個に相当します。
頭花は2ミリメートルくらいの小花(筒状花)の集合体で、
小花には雄性小花と雌性小花があり、それぞれ雄蕊(おしべ)、雌蕊(めしべ) を有するそうです。
お分かりいただけましたでしょうか。
ウスユキソウの仲間の一個の花のように見えるものは、実は花の集合住宅、
いやもっと大規模なニュータウンのようなものかもしれません。
白い苞葉は中心の小花が咲き終わった後も健在です。
そのため、この花はずっと長く咲いているように錯覚してしまいます。

ミヤマウスユキソウの花のアップ(2017/07/10 秋田駒ヶ岳にて)

ウスユキソウの仲間の分布状況

ミヤマウスユキソウはご覧の通り、
日本海側は鳥海山、月山、朝日連峰、飯豊連峰に生育します。

ウスユキソウの仲間の分布マップ

ミヤマウスユキソウの学名 Leontopodium fauriei ですが、
学名の種小名 fauriei は
明治時代、鳥海山でこの種を採集したフランス人宣教師 Fauriei への献名と聞きます。

ところが、現在の鳥海山にミヤマウスユキソウはあまり多くありません。
絶滅が心配されます。

 鳥海山のミヤマウスユキソウ(2020/06/24)

奥羽山系にはミヤマ ウスユキソウは少ないようです。
以前は和賀山塊や焼石岳にも有るとされましたが、
私自身、見ておりませんし、他の方が最近見たという話も聞きません。
現在、この花が有る山は奥羽山系では秋田駒ヶ岳だけかもしれませんが、
その数は少なく、登山道近くではほとんど見られなくなりました。

以前は下の写真の株の前で、カメラマンが行列を作っていたものでしたが、
ここ数年は見ておりません。
盗掘されたのでしょうか。
もしそうだとしたら、とても悲しいことです。

以上。

 秋田駒ヶ岳のミヤマウスユキソウ(2015/06/21) 

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