
山の日レポート
通信員レポート「これでいいのか登山道」
【連載44】これでいいのか登山道
2026.06.20
連載44回目は、前回に続き鹿島賢史さんによる、「利用集中が生む登山道荒廃」の2回目となります。福島県の安達太良山を事例に、前回は登山道荒廃の実態をレポートいただきましたが、今回は、それらに対して現場でどのような整備が行われているのかを具体的に記していただきました。
また、皆様が「山の道」について思うこと、考えることなども、ぜひ、ご寄稿くださいましたら幸いです(ご寄稿先メールアドレスは文末にあります)。
鹿島 賢史 (筑波大学大学院 山岳科学学位プログラム)
前回は登山道荒廃の実態を見ました。今回は、それらに対して現場でどのような整備が行われているのかを具体的に見ていきます。
安達太良山では、環境省や山小屋、地域の企業主催の登山道整備イベントが定期的に実施されています。これらのイベントには山の関係者のみならず、一般の登山者も参加し、実際の整備作業に携わることができます。
現場ではまず、安全管理や作業手順に関する説明が行われ、その後グループに分かれて各作業に取り組みます。参加者の多くは整備未経験者ですが、資材運搬や簡易な施工など、比較的取り組みやすい作業を担うことで、整備の一端を支えることができます。
一方で、どこにどのような施工を行うかという判断は、経験豊富な指導者によって行われています。この点に、登山道整備が単なる労働ではなく、専門的知見に基づく活動であることが表れています。

ロープウェイを利用し、参加者皆で整備資材を運ぶ
登山道整備の内容は、荒廃の種類や程度によって大きく異なります。例えば、雨水の流れによって路面が侵食されている箇所では、導流工を設置して水の流れを分散・誘導します。また、崩壊した階段部分では、木材等を用いて再構築を行います。
これらの作業は一見すると単純に見えるかもしれませんが、実際には「なぜその場所が荒廃したのか」という原因の理解が不可欠です。水の流れを誤って遮断すれば、別の場所で侵食が進行する可能性もあるからです。
つまり、登山道整備とは“壊れた箇所を直す”のではなく、“壊れる構造そのものに介入する”行為であると言えます。

階段の再構築は、複雑かつ比較的難しいため、専門家・経験者を中心に行われる

足場を安定させるために、石の向きを変える整備未経験の一般参加者
安達太良山で特徴的なのが、近自然工法の採用です。この手法では、現地で入手可能な石や木材など自然物を活用し、周囲の環境と調和した形で整備が行われます。
重要なのは、自然を“制御する”のではなく、“自然の働きを前提として利用する”という発想です。例えば、水を完全に止めるのではなく、流れる方向を調整することで侵食を防ぐといった考え方が取られます。
このような手法は、景観への影響を抑えるだけでなく、長期的な維持管理の負担軽減にも大きく貢献します。

凍結融解による崩落箇所に木材を設置し、再堆積させる
しかしながら、こうした整備が十分に行き届いているわけではありません。人手や予算には限りがあり、広範囲にわたる荒廃すべてに対応することは困難です。また、登山道は一度整備すれば終わりではなく、時間の経過とともに再び劣化していきます。
このため、整備は単発の取り組みではなく、継続的な関与を前提とした活動として位置づける必要があります。しかし現状では、その継続性を担保する体制が十分に整っているとは言えません。
現場で行われている整備は、多くの人々の関与によって支えられています。誰がどのように関わり、この活動を維持しているのか。その構造を理解することは、登山道整備の持続可能性を考える上で不可欠です。次回は、この担い手の問題に焦点を当てます。
登山道法研究会では、これまでに2冊の報告書を刊行しています。こちらは本サイトの電子ブックコーナーで、無料でお読み頂けます。
https://yamanohi.net/ebooklist.php
また、第2集報告書『めざそう、みんなの「山の道」-私たちにできることは何か-』につきましては、紙の報告書をご希望の方に実費頒布しております。
ご希望の方は「これでいいのか登山道第2集入手希望」として、住所、氏名、電話番号を記載のうえ、郵便またはメールにてお申し込みください。
●申込先=〒123-0852 東京都足立区関原三丁目25-3 久保田賢次
●メール=gama331202@gmail.com
●頒布価格=実費1000円+送料(430円)
※振込先は報告書送付時にお知らせいたします。
報告書の頒布は、以下のグーグルフォームからも簡単にお申込み頂けます。
報告書申し込みフォーム
先に刊行致しました「第1集報告書」は在庫がございませんが、ほぼ同内容のものが、山と渓谷社「ヤマケイ新書」として刊行されています。
ヤマケイ新書 これでいいのか登山道 現状と課題 | 山と溪谷社 (yamakei.co.jp)
また、このコーナーでも、全国各地で登山道整備に汗を流している方々のご寄稿なども掲載できればと思います。
この記事をご覧の皆さまで、登山道の課題に関心をお持ちの方々のご意見や投稿も募集しますので、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで
RELATED
関連記事など