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山の日レポート

山の日レポート

山の日を知ろう

12月11日は国際山の日

2021.12.11

全国山の日協議会

北海道大学 教授 渡辺悌二

北海道大学大学院地球環境科学研究院 統合環境科学部門環境地理学分野教授の渡辺悌二先生に綴っていただきました。

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皆さんは、12月11日が国際山の日(International Mountain Day)であることをご存じだろうか。日本に山の日ができた際に名前だけは聞いたことがあるという方もいるかもしれない。しかし、山の日アンバサダーの萩原浩司さんが述べているように、日本国民の間には、いまもなおその存在を知らない人が多いのではないだろうか。

萩原浩司氏が語る「山の日」制定の歴史1.運動のスタート

国連食糧農業機関(FAO)が定めた国際山の日のロゴ   英語の他に、アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語のロゴがある。

国際山の日(国際山岳デーと呼ばれることもある)は、日本の山の日よりも古く、2003年にスタートした。国際山の日の設立を理解するためには、2002年の国際山岳年(International Year of Mountains)について振り返る必要がある。もともと国際山岳年の設立には、地球環境の保全と持続可能な開発の実現のための具体的な方策を得ることを目的とした、1992年の地球サミット(リオ・サミット)が関係している。地球サミットの成果物として知られる『アジェンダ21』(行動計画)の中に、山の章である「第13章 脆弱な生態系の管理:持続可能な山地開発(Managing Fragile Ecosystems: Sustainable Mountain Development)」が設けられた。『アジェンダ21』の第13章を受けて山の重要性への関心が国際的に高まり、1998年に、国連総会は2002年を国連の「国際山岳年」とする採択を行ったのである。

そして、この2002年の国際山岳年が、国際山の日の設立に大きく関わっている。2002年10月28日〜11月1日に、国際山岳年の提唱国キルギスの首都ビシュケクで、ビシュケク・グローバル・マウンテン・サミットが開催された。このサミットでは、「国際山岳年を超えて(IYM and Beyond)」という将来の継続的な活動方針が示された。そこでつくられた最終文書が国際山の日の設立の土台となって、2003年1月30日に国連総会で決議を経て、2003年から毎年12月11日を国際山の日とすることが定められた。

2002年国際山岳年のグローバル・マウンテン・サミットで挨拶をする当時のキルギス大統領(キルギス・ビシュケクにて筆者撮影)

国際山の日は何をする日か

国連決議では、持続可能な山岳地域の発展の重要性への関心を喚起するためにさまざまなレベルで行事を行うことが提唱された。国際山の日の調整機関である国連食糧農業機関(FAO)によれば、国際山の日は、生命にとっての山の重要性についての認識を高め、山岳開発における機会と課題について啓発し、山岳地域の生活環境によりよい変化をもたらすための連携を促進するために存在している。

この目的のために、国際山の日では、毎年ある特定のテーマに焦点を当てて、国際的なレベルから地域や学校レベルまで、さまざまな行事を行うことが提唱されている。過去のテーマは下に示した通りである。ここから理解できるように、毎年、大きなテーマが設定されていて、とうてい12月11日の一日だけで活動が完結できる内容にはなっていない。すなわち、国際山の日は、12月11日の活動に期待をしているのではなく、その一年間に実施した多くの活動を振り返る日としてづけられていると考えて良いであろう。

2021年までの国際山の日のテーマ

2021年 持続可能な山岳観光
2020年 山の生物多様性
2019年 若者にとっての山の問題
2018年 山は重要である(水のため、災害リスク軽減のため、観光のため、食料のため、若者のため、先住民のため、生物多様性のため)
2017年 山は圧力を受けている:気候、飢餓、移民
2016年 山の文化:多様性の尊重とアイデンティティの強化
2015年 暮らしを豊かにする山の幸の普及
2014年 山の農業
2013年 持続可能な未来へのカギ
2012年 山の生活を祝う
2011年 森林
2010年 山岳少数民族と先住民族
2009年 山岳地域の災害リスク管理
2008年 フードセキュリティ(食糧安全保障)
2007年 気候変動
2006年 生物多様性管理
2005年 観光
2004年 平和
2003年 水源としての山

日本にとっての国際山の日

国際山の日は、ビシュケク・グローバル・マウンテン・サミットで示された「国際山岳年を超えて」の具体的な活動の日として位置づけることができる。国際山岳年の10年後の2012年には、「国際山岳年プラス10(IYM+10)」が設けられ、 2002年の国際山岳年に私たちに課せられた「山の宿題」を2002年以降の10年間にどれだけ解決できたのかが、多くの国で議論された。国際山岳年から20年目となる2022年は「国際山岳年プラス20(IYM+20)」の年であり、2012年以降に新たに生まれたさまざまな問題への取り組みや、2016年にできた日本の山の日のこれまでの活動について振り返る良い機会となる。

日本の山の日における活動や議論は、残念ながら国際的にはほとんど理解されていない。少子高齢化社会の「先進国」である日本から、日本の山の日の取り組みを世界に向けて発信する意義は大きい。一方、日本の山の持続可能性の議論にとっても、海外における取り組みの理解は欠かせない。日本は国際山の日のパートナーシップには加わっていないが、日本に山の日ができたいま、「国際山岳年プラス20」を契機に、日本においても毎年、国際山の日で求められているテーマについて議論をしていくことが期待されているのではないだろうか。

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