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ミスター富士山手記【運命の生涯登山】 6.高年時代 ①(記録への挑戦)
2026.01.23
文・写真提供 實川欣伸さん
初めて東京から富士山へ歩いたのは、1994年11月11日51歳の時だった。
登頂回数は63回目で、5連続登頂や4登山道一筆登山を行い、すでにゼロ富士も経験済みであった。ゼロ富士は、特段富士講を意識した訳ではなく、その昔、インド洋からエヴェレスト登頂するゼロエヴェレストを達成した外国人がいて、機会があれば海抜ゼロメートル登山をしたいと思っていた。今回の二度目のゼロ富士は、“日本一の首都「東京」から日本一高い「富士山」へ”という思いつきだった。
11月10日午前零時、東京駅をスタート。東海道を歩き始めたのだが、大都会というのは信号が多く思うように歩けない。そして歩き始めてすぐに、パトカーが私の脇を並走して走っているのに気付いた。暫くして走り去ったかと思うと、またパトカーが来て並走している。すると大森の派出所の前で警察官が出てきて、「何処へ行くのですか?」と聞いてきた。職務質問だ。当時、某宗教団体が世間を騒がせていた。怪しまれたのだろうか?「富士山に」と言うと「何をしに行く?」と問われ「登りに」と言うと「修行僧ですか」と返されたが、完全に不審者扱いだった。勤務先である三島駅前の大手企業協力会社の社員だと説明し、何とか解放された。真夜中~夜明けを迎えた後もひたすら歩き、夕暮れ時に国府津駅前に到着。夜の箱根越えは気味が悪いので国道246号に向かったが、歩道は無く飛ばしていく大型車が多かった為、生きた心地がしなかった。更に小山町に入ると、外灯が少なく濃霧が酷くて更に危険を感じた為、これではトラックに轢かれると思い、それならばいっそのこと乗せてもらおうと、手を挙げヒッチハイクを試みた。だが当然停まってくれる車は無く、意を決し恐る恐る歩き通した。
無事に富士山御殿場口から登り始め、日が暮れる頃、八合目に到着した。すると小屋の脇から人影が出たり隠れたりしているのだ。怖くて逃げるように通り過ぎた。幽霊か?幻覚だったか?そのまま一心不乱に登り、真っ暗な山頂に無事登頂。
日本一の首都東京から富士山まで、計44時間の長旅だった。
ふと思う。一日=24時間で何回登れるだろうか?と。

【東京→富士山】出発の東京駅(1994年11月10日 0:00)
1999年8月25日 富士宮口五合目 5時31分 登山開始。夏山シーズンも終わりに近づき、 お盆前後の混雑が嘘のような静けさである。山頂に雲がかかっているが、良く晴れた気持の良い朝だ。さわやかな空気を吸いながら一歩一歩踏みしめるように登り8時25分山頂着。証拠の登頂写真を撮りすぐに下山開始。登山者が少ないのでスムーズに下山ができ、五合目に10時01分到着。

【一日4連続登山】1回目の山頂(人差し指で1回目のポーズ)
観光客に写真撮影を頼み、2回目の登山開始。ガスがかかって来たが天気が崩れることは無さそうだった。八合目辺りで天気が良くなり暑くなった。13時30分2回目登頂。剣ヶ峰には、この年で観測を終える富士山レーダードームが青空に白く輝いている。写真を写しすぐに下山開始。膝を痛めぬよう慎重に下山し15時37分5合目に到着。

【一日4連続登山】2回目の山頂(指で2回目のポーズ)
小休止をして3回目の登山開始。八合目18時着。九合万年雪山荘は営業していたが、九合五勺胸突八丁小屋は小屋終いの準備をしていた。2~3人の登山者とすれ違い、19時20分山頂着。浅間神社は戸の隙間から明かりが漏れていた。 暗闇の中、写真を写し下山開始。疲労が出始めたか?足元を照らし一歩一歩確実に注意深く下りていたが、不覚にも八合目の岩場で足を捻ってしまった。足首に激痛が走った。焦ったが、足首を廻してみると幸い重傷ではなさそうだった。右足をかばいながら歩き22時、五合目到着。

【一日4連続登山】3回目の山頂(山頂到着19時20分。真っ暗な中撮影)
写真撮影し4回目の登山開始。補助の懐中電灯の球が切れ、六合目の宝永山荘で懐中電灯を買った。痛めた足を気にすることなく九合目まで登ったところで、万年雪山荘には20人程の登山者がいて、私に気付いた小屋の方が「上の小屋は全部閉まっているよ」と声を掛けてくれた。「連続登山をしている」と答えると、「へぇ~スゲェ!我々も昔は強力をやったが・・それはスゲェ」と大層驚き、小屋にいた登山客に「この人、今日4回目の登山をしているんだとよ。頑張りなよ!」と激励してくれた。今思い起こせば、声を掛けてくれたのは、その後、私の富士登山で一番お世話になる事となる万年雪山荘会長だったと思う。その激励に力を貰い、夜中2時35分に4回目の登頂。

【一日4連続登山】4回目の山頂(夜中2時35分の山頂 指ポーズをする余裕はなかった)
写真を写し下山開始。慎重に下りるも捻った右足が痛くなってきた。ただ、過去何度か足を痛めても歩き続けるうちに治ることが多いので、今回も治ることを信じて歩き続けた。しかし今回は、単発登山とは違う。新七合目辺りで足を引き摺るようになりペースはガタ落ち、東の空が朝焼けに輝き始めたが、足の痛さで感動は無かった。六合目からは全く足が動かなくなりそうで「大丈夫だ」と発破をかけやっとの思いで5時29分、五合目に到着。登山時間は23時間58分。
一日=24時間で4登頂できた。自問自答し感動、そしてこの挑戦は通過点の一つだった。

【一日4連続登山】朝日を見る余裕もなく疲労困憊で1日=24時間登山を終えた)
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