
山の日レポート
通信員レポート「これでいいのか登山道」
【連載47】これでいいのか登山道
2026.08.25
連載47回目となりました。前回に続き日光ネイチャーガイドの宮地信良さんに、「日光からの報告」をお寄せいただきました。今回は、子どもの「たんけんプログラム」と「登山」という内容です。ぜひご覧ください。
また、皆様が「山の道」について思うこと、考えることなども、ぜひ、ご寄稿くださいましたら幸いです(ご寄稿先メールアドレスは文末にあります)。
宮地信良(日光ネイチャーガイド)
日光は首都圏の小学校にとって修学旅行のメッカである。かくいう私も数十年前の小学生時代に修学旅行で日光を訪れ、東照宮や華厳の滝を訪れ、奥日光の光徳牧場近くの川で遊んだ記憶がある。その日光で私がネイチャーガイド業を始めたのは約25年前、最初から大人のガイドのほか小学生のガイドも行っていた。その頃の修学旅行ガイドのプログラムは実に多彩、もちろん戦場ヶ原の木道コースを歩く学校もあったが、1日がかりでかなりのアップダウンを歩く「切込湖刈込湖ハイキング」を選ぶ学校も多かった。さらに、道なき道を歩く「森たんけん」や、苔むした峡谷の中を水に入りながら歩く「谷たんけん」、あるいはスギ林に入ってクマの樹木被害を調査するプログラムまで、実にさまざまなプログラムを行っていた。

森たんけんの様子

谷たんけんの様子
ここで私の会社がガイドを行った小学校の修学旅行の動向を見てみよう。2010年から2023年までの小学校の修学旅行コースを調べ、それを2年間ごとに分けて利用したコースを調べたところ、次のようであった。
・2010年~2011年:6コース 森たんけん、谷たんけん、小田代ヶ原から西ノ湖へ 等
・2014年~2015年:7コース 森たんけん、谷たんけん、切込湖刈込湖ハイキング 等
・2018年~2019年:4コース 森たんけん、谷たんけん、戦場ヶ原コース 等
・2022年~2023年:4コース 戦場ヶ原コース、湯ノ湖一周、小田代ヶ原 等
ここ十数年の間に、日光での修学旅行コースは木道が整備されている安全で楽なコースに集約されてきたと言える。このことは学校を取り巻く社会的、教育的な状況の変化が大きい理由だと思われるが、現代の都会人の生活といえば、歩くのは舗装道路、マンションに住み、一時もスマホを離すことなく、階段は使わずエレベーターやエスカレーターに頼る・・・このような毎日を送る子どもにとっては、自然の中に入り込んでゆくことが「怖いこと」になってきたのかもしれない。

戦場ヶ原を歩く修学旅行生
人間は数千年という長い間、山野を走り回って獲物を採り、木の実を採取し、川に入って魚を採ってきた。この歴史が人間に刻んだDNAは簡単に消え去るものではなく、現代の人間も潜在的に持ち続けているはずである。「森たんけん」や「谷たんけん」を行った後に多くの子どもが満足そうな表情を見せる。これはそのような潜在的な欲求を発揮できた喜びの表情だったのかもしれない。現代はそのような欲求を発揮する場がなかなか無いのだが、チャンスさえあればきっと表に出したいのだ。ここに「森たんけん」や「谷たんけん」の大きな意義があるのだと思う。
私自身のことになるが、私が山を好きになった理由を今でもはっきり覚えている。小学校4年生の時、姉の会社の山グループに連れられて高尾山から陣馬山までの子供にとっては長いコースを歩き通した。歩き終わった後に「小さいのに良く歩いたね!」と口々に褒められ、とてもうれしかった。この時以来、私はよく山に登る子どもになった。
登山も、実は人間の持っているこのようなDNAを発揮する場のひとつなのではないかと感じている。ヤブコギ、沢登り、ロッククライミング等はかなり原初的な形に近いものだが、そうではない通常の登山であっても、土を踏みしめて歩き、急坂をよじ登り、時には川を徒渉する。登山は「森たんけん」「谷たんけん」等と同様に、長い間かけて沁み込んだ人間のDNAを表出できる現代の貴重な「場」と言えるのではないだろうか。

最近の子どもに「道から外れて森に入ってもいいよ!」と言っても、自分から入る子が少なくなり、むしろ嫌がる子供が多くなった。自然を取り巻く現代の危機とは、「森に入って自然を壊す」ことよりも「森に入らない子が増えた」ことなのかもしれない。
登山道法研究会では、これまでに2冊の報告書を刊行しています。こちらは本サイトの電子ブックコーナーで、無料でお読み頂けます。
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ヤマケイ新書 これでいいのか登山道 現状と課題 | 山と溪谷社 (yamakei.co.jp)
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この記事をご覧の皆さまで、登山道の課題に関心をお持ちの方々のご意見や投稿も募集しますので、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで
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