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山の日レポート

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通信員レポート

立山信仰の世界へようこそ!【連載11】重要有形民俗文化財「立山信仰用具」

2026.06.25

全国山の日協議会

 みなさん、こんにちは。富山県[立山博物館]館長の高野です。

 芦峅寺と岩峅寺の両集落にのこされた立山信仰関係の資料群は、「立山信仰用具」の名称で国の重要有形民俗文化財に指定されています。今回は、これまで「立山信仰用具」はどのように研究され、どのような価値があるのかをご紹介します。

芦峅寺の衆徒と中語(復元写真)

(1)立山芦峅寺集落の立山信仰用具

 江戸前期、岩峅寺には23坊家があり、芦峅寺には6坊家と数人の社人しかおらず、岩峅寺が優位でした。ところが江戸後期の享和元年(1801年)以降では、岩峅寺24坊家、芦峅寺33坊家と5社人となり、その数が逆転しました。
 芦峅寺衆徒は「立山曼荼羅」を使って布教活動を全国で展開し、さらには「布橋灌頂会」により江戸幕府大奥の女性からの信仰も集めるようになるなど、その活動はめざましく、経済的にも優位に立つようになります。そのため、昭和40年代になっても芦峅寺には多くの信仰用具がのこされていました。
 富山県教育委員会は、昭和43・44年に芦峅寺の古老への聞き取りや民俗資料の調査を行い、『立山民俗 立山地区民俗資料緊急調査報告書』を刊行しました。その成果は、1970年(昭和45年)、国の重要民俗資料(現在の重要有形民俗文化財)の指定につながり、「立山信仰用具」は芦峅寺の資料群(1,083点)で構成されていました。
 さらに、1972年(昭和47年)に「立山信仰用具」を公開する施設として芦峅寺に「立山風土記の丘資料館」が開館しました。1991年(平成3年)には、その機能を引き継ぐ形で立山博物館が開館し、今日に至っています。
 他方で、岩峅寺では、地元の郷土史家による古文書の整理・解読はなされていたものの、岩峅寺にのこる信仰用具の本格的な調査は行われていませんでした。立山博物館の学芸員は、その課題に向き合い、岩峅寺の信仰用具の調査研究を進めていったのです。

芦峅寺の宿坊接待の様子(復元写真)

(2)追加指定された岩峅寺集落の立山信仰用具

 立山博物館が着目したのは、延命院、多賀坊(現:多賀宮)、中道坊にのこされていた信仰用具です。
 岩峅寺には最大24の坊家がありましたが、幕末期の安政5年(1858年)に常願寺川流域に大土石流が襲いかかり、9つの坊家の建物が流失してしまいます。その後、明治政府による神仏分離政策がはじまり、神職に転じるなかで山中や集落にある仏像や仏具を手放していったようです。しかし、幸いにも先の3つの旧坊家に信仰用具がのこされていたのです。
 立山博物館の調査の結果、3つの旧坊家には、明治以降の宿坊での生活や接待に関する用具や神職として使用した道具、江戸時代の「立山禅定登山案内図」の版木などがのこされており、芦峅寺にはない用具も含まれていることがわかりました。
 また、芦峅寺や岩峅寺は明治以降に急速に衰退したとみられていましたが、両集落にのこる信仰用具からは、明治中期にも宿坊活動の復興の様子をうかがうことができました。新たな調査研究により、立山信仰の歴史を理解するうえでの大きな成果をえることができたのです。
 これらの資料の価値が文化庁に認められ、令和2年3月、芦峅寺のみの資料で構成されていた「立山信仰用具」1,083点に、新たに岩峅寺の資料などが160点追加指定され、合計1,243点となったのです。

昭和45年指定の立山信仰用具(一部、富山県[立山博物館]蔵)

(3)「立山信仰用具」を守り、後世に伝える

 立山信仰用具は、①宿坊生活関係(363点)、②宿坊接待関係(440点)、③登拝装束関係(110点)、④唱導布教関係(221点)、⑤祈祷関係(109点)の5つに分類されます。
 文化庁は「立山信仰用具」の価値について次のように評価しています。
「立山は、わが国の代表的な霊山の一つに数えられ、山岳信仰の一拠点をなしている。この収集は、宿坊生活、宿坊接待、登拝装束、唱導布教、祈祷関係など、立山信仰に関する用具を集大成したもので、わが国の山岳信仰の様相をよく示すものであり、その実態の把握や理解において、きわめて重要である」(文化庁発表資料より)
 とやまの先人が育んだ、立山信仰と呼ばれる「こころの文化」は、後世に伝えるべき貴重な文化であると言えるでしょう。

ほらがい(法螺貝)(祈祷関係)

はんぎ(版木「立山禅定登山案内図」)(唱導布教関係)

立山曼荼羅立山博物館D本(唱導布教関係)

立山曼荼羅立山博物館F本(旧富山県立図書館本)(唱導布教関係)

 次回は、立山における自然と人間とのかかわり方をテーマとする、立山博物館を紹介します。引き続き、連載にお付き合いいただければ幸いです。

◎立山信仰用具についてさらに詳しく知りたい方は、『立山信仰と山麓のくらし-国指定重要有形民俗文化材「立山信仰用具」の世界-』(税込1,200円)がオススメです。購入方法などについては、立山博物館(076-481-1216)までお問い合わせください。

追加指定の立山信仰用具(一部、富山県[立山博物館]蔵)

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